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May 09, 2005

しゃくり

 音の出だしをしゃくりあげることは、基本的に嫌いである。「しゃくる」とはギターではチョ―キング、キーボードではベンドとほぼ同じだと思っているが、目的の音より低い音(半音や1音が多い)から発音し、音程を滑らかに目的の音にアプローチすること。こう書くと難しいようだが、要するにギターの「ギュイーン」ってのがそれと言えば分かり易いかもしれない。
 この「しゃくり」だがサックスの場合、いやらしく聞こえる場合が多い(少なくとも僕には)。とくに初級者、中級者で癖になってしまってる人は何を吹いても演歌調になる。演歌が悪いといってるわけではない。ちゃんとコントロールされていない場合は当然演歌にも使えない。アプローチ後の音程が上ずっていたり、アプローチ音まで音程が上がらなかったり、アプローチ後のビブラートとバランスが取れていなかったり、、、まぁいろいろな意味で簡単に出来てしまうがなかなかカッコ良く聞こえないのがこの「しゃくり」。
 結局しゃくること自体が嫌いなので半音あるいは1音下の音を装飾音に使って音の出だしに表情をつけることが多かった。M.ブレッカーやD.サンボーンも割とこの方法を使っている。もちろん彼らはまったくしゃくることをしないわけではなく、ここぞという時のフラジオ音域でのギターのチョーキングのような吹き方とか、ちょっとわざとらしくゆっくりしゃくりあげるような吹き方は時々している。効果的にゆっくりしゃくりあげる吹き方ですごいと思うのはJ.レッドマン。ブルージーな曲でのクォータートーンぐらいの微妙な音程からゆっくり(2拍くらい伸ばすこともある)アプローチしていくのがなんとも言えずカッコいい。しかも自然でまことに色気がある。
 しかし、今回書こうと思ったのは(やたら長い前振りだった)実はJ.コルトレーン。昔からずっとコルトレーンはしゃくらないと思っていたのだ。スイング、ビバップのよくしゃくりあげるテナーとは一線を画したストレートであまり色気をつけない出音がコルトレーンの特徴だと。
 名盤の「バラード」はもう何百回も聴いてるが、今回その中の同じ曲を練習していてはじめて気がついた。確かにしゃくっている。微妙だがほんのわずかの音程でしかも短く、、、。メロディフェイクもあまりされず、ストレートにスタンダードを淡々と演奏されるこのアルバムのコルトレーンが妙に色っぽく感じたのはその音色と自分のスタイルを抑制したクールなプレイにあると思っていたのだが、この微妙なしゃくりもコルトレーンの色気を醸し出している一部ではないか。
 しかし20年以上もコルトレーンを聴き続けてるけれども、こんな基本的なこと(少なくともサックス吹きの音に対する姿勢に関しては)にはじめて気がつくんだから音楽は奥が深い(僕の底が浅いのかも)。

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